黒蜜キッスは時間の隙間

2010年05月31日 0:55

古びた白いテーブルにわたしはひざを乗せて

意味ありげな頬杖と 口ものとの笑み

もう片方の手は スプーンをそっと握りながら

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古い邸宅に誰もいなくなって

そこに作られた 都会には場違いなカフェー

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だらしなくぽっかりあいた 今日の午後

水曜はまた日曜には遠いから

この時間はどことなく 潤っているような気持ち

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アイスクリームの黒蜜

甘すぎる何て君はわたしに笑っている

けれど 君の元の抹茶はわたしには苦すぎる

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一歩この庭から出てしまえば
どこまでも慌しい そんな世界

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ここだけはそこから切り取られているよう

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水曜の午後 大人たちは働きの時間

大人の戯れは 夜のもの

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どちらともつかない 蛹の時間を過ごすから

まだそういう時期だから

わたしたちの時間はこうしてこの隔離に甘えられる

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少しばかりに古風なウェイターが次の水を運んだなら

君は蛹のわたしにどんな言葉をかけるのだろう

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わたしが返す言葉は決まっている

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ものまねの習慣で変わられた右手の出番が終わる

きっと 左手の出番がはじまるんだということ

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他の客たち ウェイター マスター

彼らが気づかない間をついて

どうせ この通りを行く人は早足過ぎて気づいたりしない

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ほら 今がわたしたちがわたしたちだけの時間

とっても短いその時間

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誓いのキッスをするには ちょうどいいと思うのよ

わたしの唇に黒蜜で染まっているこの隙が

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